




フリーターから、なりゆきで編集者に。
40代、経験もない。ぼんやりとしたビジョンを胸に、ベジタリアン食堂を立ち上げた!
内 容
〝ベジ〟らしからぬボリュームたっぷりでしっかり味な料理と、
カジュアルで音楽的なムードで人気の「なぎ食堂」。
その店主が綴る、バタバタな開店&店運営の記録。


カフェや居酒屋など飲食店の激戦地、渋谷。
駅周辺の喧騒をよそに、
ひっそりと個店が立ち並ぶ〝渋谷のすみっこ〟鶯谷町。
この街の片隅に、2007年12月にオープンした「なぎ食堂」。
動物性食材を一切使わない「ベジ&ヴィーガン」の食事を提供する場として、
10年近く、この地に根を張り、生き残ってきた。
まるで友達の家のような生活感のあるスペース。
ベジ系のお店ながら、お客さんの層は決して女性ばかりではなく、
男性、しかも中年~年配の男性も多い。
ソイミートなどいわゆるベジ系の店らしいメニューだけでなく、
どこかエスニック系のスパイシーなメニューがあったり、
カレーがあったりと、アイディアあふれるデリの種類の豊富さもこの店の売り。
こんな、ちょっとユニークなお店を、仲間とともに立ち上げたのが小田晶房。
元々は編集者で、音楽周りの仕事をしていた彼は、
「飲食店を始めたい」というわけでもなく、
「場を作りたい」一心で、開店を決心した。
40代、プロ経験なし、資金も少なめ……そんな悪条件の中、
Do It Yourself=自分でやる!をスローガンに、
開店準備からメニューづくり、スタッフの采配、
破損部分の修理、取材の対応等に突撃してゆく。
激動の21世紀……リーマンショック、3.11、
食の安全への不安等次々に襲う未曽有の出来事。
開店から9年目を迎える2016年冬、
子育てに追われるシングルファーザーとして、
一店主として、ここまでの顛末と思いを綴る。
【目次】
はじめに
第一章
ふらふらしていた日々が、店への憧れを育てた
第二章
なりゆきで編集者に、そして自営業者になる
第三章
ヴィーガンとの出会いとベジ料理への目覚め
第四章
何もかもが手探りの中、ベジ食堂をオープン
第五章
味、メニュー、雰囲気~他店にはない僕達流のベジ食堂作り
第六章
広がっていった店の評判とその反面でのトラブル
第七章
リーマンショックで大打撃。それでもなんとか切り抜ける
第八章
家族、店、社会、価値観の変化と3.11の衝撃
第九章
一進一退の店経営。そんな中、目標を見失う
第十章
子どもとの生活と仕事、そして未来へ託すこと
あとがき





著者インタビュー


著者紹介
小田晶房(オダアキノブ)
1967年京都府生まれ。音楽誌の編集者を経てフリーのライター/編集者に。その後、福田教雄氏(Sweet Dreams)とのインディーマガジン『map』の発行、二階堂和美やトクマルシューゴを輩出したインディーレーベル、compare notesの運営、海外アーティストの招聘業務などを行う。2007年12月、渋谷の鶯谷町に、素材に肉や魚を用いないベジタリアン食を提供する「なぎ食堂」をオープン。ボリュームがあり、エスニックテイストも取り入れたしっかりした味付けのメニューで女性向けのベジカフェ等とは一線を画す店づくりを展開し、話題となる。2016年には武蔵小山に二店舗目を開店。二児の子育てと仕事に追われるシングルファーザーでもある。
著書に『なぎ食堂のベジタブル・レシピ』『野菜角打 なぎ食堂のベジおつまみ』(ともにぴあ)がある。
ー本の反応って入ってきています?
ええ。ほんま、知り合いがメールくれたりしている感じですね。
ー元々この本の企画のお願いをした時のことですが……、
全然(乗り気じゃなかった)(笑)。
そうよー! そんな話ちゃうかったやん、もう(笑)。
でも、会社内でコンセンサス取るの大変やったんやろうなとは思ったけど。最初はどうしようかなと思ったけど、結果的には正直言って良かったなと思いますし、有難かった。
結局、いろんなものが自分の中に溜まり切っちゃってたんですよ。それは嫁さんのことも含めてですけど。それを誰にも相談できない状態だったと思うし。自分のプライベートなことを表に出すのを他の人がどう思うかっていうこと以前に、それが自分にとってどれほど大きいかということに気付きましたね。だから、後で叩かれようが、『こんな、自分のことだらだら喋ってどうするの?』とか思われたりしても気にならないだろうと思えるというか。
ーそういって頂けると……。
話して、原稿まとめた後、次のことをやろうという意欲が出て来たというか。それまで本当に、何したらいいかわからない状態だったんで。何かやろう、っていう気持ちが出てきて具体的に動き始められたので、それは良かったですよ。勢いつけすぎて、あれやるこれやるって言っちゃったから、大変なことになってきている……。うっかりハイになってしまって。
この本の中でもずっと言っているけど、物理的にできないことを後先考えずにいろいろやり過ぎな感じがあって、自分の首を絞めてるっていうのはありますね……。
ー本の中のことですけど、小田さんはいろいろとなりゆきに任せてやられているんですけれど、その中でもしたたかに生きていく術を考えていたり、周りの方がサポートしてくれる運の良さとかをお持ちだなと思ったんですけど。
僕は自分自身の能力とか才能っていうのはそんなにないと思うんやけど、人と会って、この人は能力があるとか、この人は凄いっていうのがわかるっていう能力にだけはすごく長けていると思っていて。それはミュージシャンだけじゃなくて、誰でも。本の中に出てきたオクノ修*1さんのこともそうだし、安田謙一*2さんなんかもそう。細馬(宏通)*3さんも正直、たまたま喫茶店で隣に座っていて話をしたのが、知り合ったきっかけなんですよ。もし目利きっていう言葉があれば、それだけは本当に自信はありますね。あと、運はいい。
ーあと、いいスタッフの方が集まってたんだろうなと思うんですけど。
後から考えるとね。一時期、オレがずっと店に入って、スタッフの子と一緒にやっていた時は、ケンカもしてましたよ。でも逆に、その人達からホントにいろんなものをもらってたんだなって思いはありますね。それでも中にはいろいろと面倒なことの多い子が入ってきたこともあるんです。そういうのも、働いていた自分の〝業〟なのかな、と。
ー関係ないですけど、海外ドラマ好きですよね。
時間なさそうなのに、いつ観てるんですか?
最近だったらネットフリックスとかあるけど、CSの放送をただ録画し続けて、それを観てた。元々アメリカのシットコムみたいなのが好きで好きで。好きな映画でも、1位が『アメリカン・パイ』で、2位が『アメリカン・パイ2』で (笑)。ああいう、青春ダメムービーが大好き。みんななんで見ないんやろ。
でもテレビは楽しいな。音楽なんかちゃんと聴けないもんね。贅沢品じゃないですか? 嫁さんが病気の時なんか思ったけど、音楽をまともに聴くとか、映画館に映画を観に行くとか、あれほどの贅沢なことってない。だけどそんな贅沢なことを若い頃って無駄にするわけじゃないですか。みんな、どんな風に音楽聴いてるんやろ?
ー?
こんな風に(のけぞりかえって)聴いてるのかな。湯浅(学)*4さんとか、こんな風に(前のめりで屈んで)聴いてるらしいで。
ーそれはお似合いですね。
自分らがこういうこと(DIY的な)をする時の先輩というのがいないんですよ、本当に。誰かいてくれたらいいのに、と思って。もちろん、尊敬してる人はいますよ。長門芳郎*5さんとか。10歳位上で言ったら、boidの樋口さん*6とか、湯浅さんとか。でも、自分らの思ってる完全独立系じゃないんですよね。(中略)今だと、独立系でやってきた人でもすごく儲けるじゃない? 例えばZOZOとかさ。ああいう人達は、インディーのパンクマナー(儲けちゃいけない)みたいなのはないのかな……(笑)。
*1…60年代から活動するシンガー・ソングライター&コーヒー店の主人。
*2…文筆家、ロック漫筆家、ラジオDJ等のマルチな活動で知られる。
*3…人間行動学者で滋賀県立大学教授。バンド、かえる目では音楽活動も。
*4…音楽評論家。近著は『ボブ・ディランの21世紀』(音楽出版社)。
*5…音楽プロデューサー、音楽雑文家。店主を務めたレコード店の回想録『PIED PIPER DAYS~』(リットーミュージック)が話題となった。
*6…映画&音楽評論家。ビデオや書籍等をリリースするboidの主宰者でもある。
レシピ(2017/02/16更新)
ご家庭でも簡単に作れるベジ料理をご紹介

1)厚揚げときのこのトマトココナッツ煮込み
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厚揚げ(2枚)は約1cmほどの厚さに切る。きのこ(しめじや舞茸などお好みで。約1パック)は石づきを取り、食べやすい大きさにほぐしておく。
※お好みで野菜(写真は縦切りにしたピーマン)を加えてもOK
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フライパンにごま油(10cc)を入れて熱し、用意しておいた厚揚げやきのこ、野菜を炒める。
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2にトマト缶(ホールトマト。1缶約400g)を入れ、全体に火が通ってきたら、ココナッツミルク(1缶約400ml)を入れ、さらに煮込む。
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好みで塩、こしょう、またはカイエンペッパー(適宜)を入れ、できあがり。
※『なぎ食堂のベジタブル・レシピ』(ぴあ)より一部引用
作ってみた感想:
作ってみると意外に簡単。カレーのような感覚でごはんに合わせて食べるのがおすすめ。辛いもの好きなら、チリパウダーや鷹の爪などを加えてよりスパイシーにするのも良さそうです。
店舗紹介



なぎ食堂 渋谷鶯谷町店
〒150-0032 東京都渋谷区鴬谷町15-10
ロイヤルパレス渋谷103号
TEL:050-1043-7751
[営業時間]
12:00〜16:00(15:00ラストオーダー)
18:00〜23:00(22:30ラストオーダー)
日曜日のみ16:00閉店
なぎ食堂 武蔵小山平和通り店
〒152-0002 東京都目黒区目黒本町4-2-6
宝録堂ビル103号
TEL:03-6412-8319